今期楽しみに見ていたTVアニメ「装甲娘戦機」が終わってしまった…。
はあ………………………………………………………………好き。
こういうのでいいんだよ、こういうので……………。
最高に素敵な時間を過ごせたので、その感謝(?)を込めてここに批評を残す!
色々語りたいけど、以下の3点に絞ろう!ありがとう装甲娘戦機!!
- 戦闘美少女ものとしての装甲娘戦機
- TVアニメとしての装甲娘戦機
- ダンボール戦機シリーズとしての装甲娘戦機
戦闘美少女ものとしての装甲娘戦機
「戦闘」と「美少女」…私はこの2つの要素が割と好きである。
戦闘とはかけ離れた美少女に戦闘をやらせる作品はそれこそ星の数ほどあるだろうが、その中で装甲娘戦機を見ていて感じたことがある。
泥臭い
言い方を変えれば地味ということになるだろう。私は2話が終わり、次の3話で本格的な戦闘が始まりそうだと思ったとき、もっと各々がLBXユニットについている装備品を活用してガシガシ戦っていくことを想像していた。
だが、実際は全く違っていた。
なんと落とし穴を作って動きを封じてから攻撃したり、トラップを事前に設置しておいたりと「本当に子供用ホビー作品の派生作品なのか?」と思いたくなるような地味な戦闘が繰り広げられたのである。
私が見てきた戦闘美少女ものとは違う世界がそこにはあった。
この作品、本当に女の子が立案してるのか?と思うほど事前の作戦をしっかりと立てて戦闘に突入する。そして大抵想定通りにいかない。そこに楽しさ、面白さがあるわけだがこの類の作品でそれをお出しされるとは思わなかった。
なにしろ、LBXユニットなるカッコいい装備品をしているのである。もっとこう…必殺技バーン!といった戦闘があると思うのが普通ではないだろうか。それがない、そしてそのちぐはぐさが、なんとも面白い。どうにも癖になるこの作品のアイデンティティである。
さて、「戦闘」の話はこのくらいにして「美少女」の話をしよう。このアニメに出てくる女の子は5人とも可愛い。しかし、ただ可愛いだけではない。わたしはこのアニメのキャラクターデザインが3DCGとの親和性を持っていることが1話から気になっていた。要は手書きのキャラと3DCGのキャラの違和感が少ない、ということである。
もちろん3DCGが今まで以上に進化して手書きとの違いが無くなってきているのはあると思う。しかし、この作品においては手書き側も3DCGに寄り添うような作りになっているのではないかと感じるのだ。
その一番の特徴は髪の塗り方にある。この作品のキャラの髪の毛はべた塗り+ハイライトのような普通の作品が行う方法では塗られていない。何やらグラデーションのように髪の色が塗られている。おそらくこれが手書きと3DCGの違和感をなくしている1つの要因なのだろう。
こうした努力は本当にありがたい。手書きと3DCGのキャラが両方登場する作品はわりとあるが、そこで違和感を感じると精神衛生上よくない。心の中で(手書きの方が可愛いんだから全部手書きで見たいなぁ…)とかいう声が聞こえてしまうのである。これはよくない。
しかし上記の工夫も相まってか、この作品でそのように感じることはなかった。手書きのリコちゃんもかわいいし、3DCGのリコちゃんもかわいい。「美少女」という点において、精神衛生上よい作品であった。
TVアニメとしての装甲娘戦機
私は装甲娘戦機を見ていて気になったことがある。それは、
「止め絵多いな」
という点である。
最初に気づいたのは7話だったが、よくよく見返してみると1話の時点でかなり大胆に止め絵を使っている。そういう目線で見ると、いろいろなことに気がついてくる。
このアニメ、おそらく予算が少ない。エンディングを見ると「装甲娘戦機製作委員会」という名前が出ているものの、そこに書かれている会社はDMMPicturesの1社のみである。元ネタのゲームを作っているDMMGamesも、さらに元ネタの作品シリーズを作っているレベルファイブも出資をしていないのだ。
委員会とは名ばかりの1社体制なのだから、出せるお金も限られているだろう。使える人、時間も同様に限られてくるはずである。
止め絵の多用はそうした背景から生まれてきたものだろうと推測できるのだが、その多用にもかかわらず違和感を持たせない作りになっているのが非常に素晴らしい。
7話冒頭、キョウカ、ユイ、ミハルがたらいうどんを食べながらアタックファンクションについて語るシーン。ここは止め絵というわけではないが、同じ映像が繰り返し使われるというバンクの映像が続く。しかし、そこに意識が向く前にうどんをすすりながら会話する、という声優の演技に気を取られる。
同じく7話。「はしっこ」という店でうどんを食べるシーン*1で止め絵が使われているが、ここでも頬張りながらしゃべる声優の演技の方に注意が向いてしまう。このあたり、TVアニメであることを最大限利用して止め絵を使おうとする創意工夫が見られる。
さらにこうした省力の努力として10話の存在は欠かせないだろう。まるで総集編、しかし実際には本編に関わる重要なネタ晴らしのあるこの回。登場人物はほぼ目元しか映らないし、動きも少ない。主人公たちの新規カットもすべて止め絵である。にもかかわらず面白くできているのはひとえに脚本の妙というしかない。
だが、その省力だけを見て10話は語れない。作画を休ませるいわゆる「ため回」、その評価は最後のシーンでひっくり返る。それまで目元しか出ていなかった総理たちの顔が、遊撃隊5人の写真を見るときに初めて映る。この時、「省力のために目元しか映してない」という認識が、「ラストのシーンで初めて総理達が、【ジャガーノート部隊】ではなく、ただの女の子としての5人に出会う」という演出のためだったのだと改められる。
つまりこの回は、省力を逆手にとって作品演出へと昇華しているのである。私はここにTVアニメの一つの到達点を見た気がした。
TVアニメは本来2万枚の動画が必要なところを2千枚にまで抑える手塚治虫のアイデアによって生まれた*2。そのTVアニメが、今やその省力の手段を演出にまで取り込むことを実現している。なんとも素敵な話である。
ダンボール戦機シリーズとしての装甲娘戦機
私は装甲娘戦機を見てからその元ネタとしてのダンボール戦機シリーズに触れた。都合のいいことに現在Youtubeでダンボール戦機のTVアニメ第一期が見放題になっているのだ。しかも、装甲娘戦機に出てきたLBXはこの第一期にすべて出てきている。
そうしてダンボール戦機の第一期を見た私が感じたのは「やはり装甲娘戦機はダンボール戦機のシリーズ作品だったのだ」ということである。
まず、ダンボール戦機の世界では小型ロボットLBXがホビーとして流通し、強化ダンボールの中で戦わせるLBXバトルが流行している。そんな中でLBXを兵器として利用して世界を変えようとする組織と、主人公たちの戦いが描かれる。
この世界観の構図はほぼ装甲娘戦機と同様と言えるだろう。
本来はホビーであるはずのLBXが強化ダンボールの外に出されて兵器として利用されるように、本来ただの女の子だったはずの主人公は異世界に来て装甲娘として戦うことになる。
そしてこの世界観を前提として装甲娘戦機を見た場合、非常に重要なことが見えてくる。ダンボール戦機の中で主人公たちはLBXがただのホビーに戻れるように奮闘する。それは第38話の川村アミの言葉に集約されるだろう。
LBXが一番輝ける場所に。
同様に、意識せずにそれを成し遂げていたキャラが装甲娘戦機にいる。そう、主人公のリコである。リコが転移した直後、遊撃隊のリーダーであるキョウカは自分たちを指してこう話した。
わたしたちは仲良しグループではなく機能集団
ここがスタートなのである。すでに機能集団になってしまった遊撃隊のメンバーを「ただの女の子」に戻すリコの戦い…というよりもリコの無双が始まるのだ。
3話まででシビアな世界を見てきたリコは、それでも自分がただの女の子であることを捨てなかった。行けなかった修学旅行にあこがれ、京都を楽しみにするような心を忘れなかった。それに呼応するように次第に遊撃隊のメンバーも修学旅行を楽しむただの女の子へと戻っていく。
そして最終話。相変わらず射撃を外し戦う存在としてまるでダメダメなところを見せつけるリコ、さらに他のメンバーも同じように攻撃を外して見せて「ただの女の子」に戻ったことを証明する。ラストでは兵器としてのLBXユニットがすべて外れ、元の世界に、ただの女の子がホビーとしてのLBXを手に取った世界へと帰還する。
ここの流れは本当に美しい。LBXユニットがパージされていく理由をしっかりと持たせながら、作品として持たせたい意味を完璧に取り込めている。
ここで「ダンボール戦機」「命がけの戦い」「修学旅行」というまるでバラバラのように見えた要素が、完全に一つに集約されるのだ。これほどまでの見事な企画・構成…芸術的という他ない。
おわりに
マジで悲しい。
いやー終わっちゃった。装甲娘戦機…。いや、ミゼレムクライシスの方ではまだ会えるけどさ…*3。
はあ…。でも本当にいいTVアニメを見させてもらった。こういう終わり方ホント好き。またこんな素敵なアニメに出会えるといいな。
あと最後に、
うおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!
装甲娘戦機Blu-ray第1巻3月31日発売!!!!!!!!!!!!!