アニメ批評

はいふり批評23 寄せ集めのクラスとはいふり

作者の個性を感じさせず、他者にゆだねられた芸術の理想的な姿こそ、ウォーホルが生涯にわたって見つめてきたイコンに他ならなかった。 イコンにとって作者は重要ではなく、作品の個性もオリジナリティも必要とされないが、教会や家庭で日常的に崇敬されてい…

はいふり批評22 RATtウイルスの起源を探る

哲学者たちにとってもっともむずかしい仕事の一つは、思想の世界から現実的な世界のなかへおりてゆくことである。 ーーマルクス、エンゲルス「ドイツ・イデオロギー」 今回行おうとしている批評は、今までの批評とはかなり趣が異なる。私自身、この批評を見…

劇場版 少女☆歌劇 レヴュースタァライト 再生産総集編

つい先日劇場公開されたばかりの「少女☆歌劇 レヴュースタァライト 再生産総集編」を見てきました。TVシリーズは見ていなかったんですが、ちょっと興味があったので視聴。その感想的なものになります。 TVシリーズの総集編らしいのでネタバレ云々はあんまり…

はいふり批評21 「はいふりは胸に甘えていない」とはどういうことか

俺は小さいオッパイが好きだぜ。だって、あれって『いらっしゃいませ!よろしくね!』って感じじゃない。でも巨乳は『悪いけど、5分以内でたのむわ』って感じだもの ーーミッチ・ファテル 2019年6月2日。「ハイスクール・フリート WEB特番 ゲームと映画でピ…

楽園追放 -Expelled from Paradise-

今朝「楽園追放 -Expelled from Paradise-」を見た。2014年の劇場アニメだが、上映当時はかなり話題になっていた。私は結局見なかったが、主人公の女の子が可愛いということだけはしっかりと覚えていた。 見てみるととても面白かったので、感想を書いておく。…

はいふり批評20 七つの青は今日も世界を包んでいる

国破れて山河在り ーー杜甫 批評や哲学というものは、ある思想が生まれてくるとしばらくしてそれに対する反発が起こる。作者や道徳的な意図を探る批評の反発から形式主義批評は生まれ、形式主義批評(特に構造主義)への反発から脱構築が生まれた。さらに後…

はいふり批評19 日本占領、その先に

私は日本国民に対して事実上無制限の権限をもっていた。歴史上いかなる植民地総督も、征服者も、総司令官も、私が日本国民に対してもったほどの権力をもったことはなかった。私の権力は至上のものであった。 ーーダグラス・マッカーサー「マッカーサー回想記…

はいふり批評18 はいふりの断面図を眺めよう

全体は部分の総和にあらず(The whole is greater than the sum of its parts.) ーーアリストテレス 世界の神話や昔話の中には、不思議な共通項を持っているものが多い。「母親が死んだあと、腹から生まれてきた英雄」というパターンの話は日本中に広く分布…

はいふり批評17 家族の虚構、虚構の家族

3年前、タイに旅行に行ったときのことだった。バスのガイドさんがタイの王朝について移動しながら説明をしてくれていて、私はそういった歴史などに興味を持ち始めていたころだったからとても楽しく聞いていた。その中で、 現在のバンコク王朝の前のトンブリ…

はいふり批評番外編 劇場版ハイスクール・フリート

「はいふり」改め「ハイスクール・フリート」 ーーハイスクール・フリート公式 2020年1月12日、記念艦三笠で先行上映された劇場版ハイスクール・フリートを見てきた。最後A-1 Picturesの柏田さんがでてきて作画の謝罪をしたのには笑ったが、とにかく劇場版の…

はいふり批評16 船が勝手に進めるいうんなら、進んでみぃや!

人は女性に生まれるのではない、女性になるのだ ーーシモーヌ・ド・ボーヴォワール「第二の性」 2019年の後半あたりからだったろうか?フェミニズム、フェミニストとされる人たちの主張が大きく取りざたされるようになったのは。本来は精神分析批評の後あた…

はいふり批評15 はいふりはなぜ成功したのか

ああ、金、金!この金のためにどれほど多くの悲しいことがこの世に起こることであろうか! ーーレフ・トルストイ アニメの製作者として、私たちが一番最初に思い浮かべるのは監督、脚本、キャラクターデザインなどになるだろう。アニメの製作現場を描いたTV…

はいふり批評14 防衛関係費を叩いてみれば、はいふり開花の音がする

国家が有する政治、経済、文化のすべてを含む種々の力の中で、古来何人も否定しえない最も基本的なものは、畢竟軍事力であって、この軍事力のバランスについての正確な認識のない国際関係論は、どこか心棒が一本抜けたものにならざるをえないという、常識的…

劇場アニメ「BLACK FOX」感想などなど

一晩経ったが、まだ興奮冷めやらぬ。そんな気持ちでこのブログを書いている。 昨日、新宿バルト9で劇場アニメ「BLACK FOX」を見てきた。元々「ハイスクール・フリート」でサブキャラクターデザインをしていた斎藤敦史さんがキャラクターデザインをしている…

はいふり批評13 岬明乃はなぜ母親ではなく父親を目指すのか

たのんだぞ、ハムレット。もう行かねばならぬ。夜明けが近づいた。はかない蛍の火も薄れてゆく。もうこれまでだ。行くぞ。父を忘れるな、父の頼みを。 ーーウィリアム・シェイクスピア「ハムレット」 今回行おうとするのは精神分析批評と呼ばれるものである…

はいふり批評12 はいふり、脱構築、全体主義

善や悪はただの名目にすぎず、容易にくるくるどちらにでも移し変えることができる ーーラルフ・ウォルドー・エマーソン 前回予告したとおり、今回は「脱構築批評」をはいふりに適用していく。 最初に、脱構築という直感的ではない概念の説明をした後、試しに…

はいふり批評11 はいふりをのぞく時、はいふりもまたこちらをのぞいているのだ

読者から私が期待するのは、読者が私の本の中に私の知らなかったことを読み取ってくれることです。ただし、それを私が期待できるのは、自分がまだ知らないことを読みたいと思っている読者だけなのです ーーイタロ・カルヴィーノ 今まで私は伝統的批評として…

はいふり批評10 形式主義批評その2 はいふり三大アイロニー

「施肥が十分で栄養状態のいい茶の木には、花がほとんど咲きません」 花は、言うまでもなく植物の繁殖器官、次の世代へ生命を受け継がせるための種子をつくる器官です。その花を、植物が準備しなくなるのは、終わりのない生命を幻覚できるほどの、エネルギー…

はいふり批評9 交響曲<はいふり>

「天才」は美しいメロディーを思いついた後の綿密な音楽設計で、凡人にはっきりと差をつけるのである。 ーー三輪眞弘「コンピュータ・エイジの音楽理論」 今までの批評は、構成や脚本に対してのものだった。しかし、今回の批評は少し視点を変えてみる。作品…

はいふり批評8 形式主義批評その1 ネコと一緒に見るはいふり

ひとしきり、騒ぎが一層激しくにぎやかになったとき、タルーはふと足を止めた。暗い舗道の上を一つの影が軽快に走っていた。それは一匹の猫、春以来おそらく初めて見かけた猫だった。 ーーアルベール・カミュ「ペスト」 今回は形式主義批評・・・特に構造主…

はいふり批評7 吉田玲子と「視点」と「家族」

アンドレア「英雄のいない国は不幸だ!」 ガリレイ「英雄を必要とする国が不幸なんだ」 ーーベルトルト・ブレヒト「ガリレイの生涯」 今回は伝統的批評の一つである「伝記的批評」に手を付けていく。これはその名の通り、作品を作者の人生の反映として見る「…

はいふり批評6 ジャンル批評まとめ

彼らの批評姿勢は、彼らを取り巻く世界の先入観と信念と分かちがたく結びついている。だから、これはなんら責められるべきことではない。 ーーテリー・イーグルトン「文学とは何か」 ここまで、はいふりを4つのジャンル、すなわち「お仕事系」「戦闘美少女…

はいふり批評5 巨大なSFと小さなRATt

おれが生を享けた憎むべき日よ!呪われた創造主よ! おまえでさえ嫌って顔をそむけるような醜い怪物をどうしてつくったのだ? ――メアリ・シェリー「フランケンシュタイン あるいは現代のプロメテウス」 はいふりに対して行うジャンル批評もこれで最後になる…

はいふり批評4 心にミリタリー魂があるんだよ

「このニ長調のソナタはたしかに、一般的な意味合いでの名曲ではない。構築は甘いし、全体の意味が見えにくいし、とりとめなく長すぎる。しかしそこには、そのような瑕疵を補ってあまりある、奥深い精神の率直なほとばしりがある」 ーー村上春樹「意味がなけ…

はいふり批評3 戦闘美少女からの逸脱

戦闘美少女というイコンは、おたく的ブリコラージュの見事な発明品である ーー斎藤環「戦闘美少女の精神分析」 はいふりを戦闘美少女系として見たとき、そこには何が見えるのだろうか。今回の視点はそこにある。 no-known.hatenablog.com

はいふり批評2 ~チームリーダー岬明乃~

信頼とはすべての重要な人間関係の核である。信頼なしには、与えることも、一体感を得ることも、リスクを冒すこともできない。 ーーテリー・ミズラヒ 今回は前回のはいふり批評で最も重要だと判断した「お仕事系」という切り口ではいふりを読み解いていこう。…

はいふり批評1 はいふりとは何だったのか?

陰口きくのはたのしいものだ。人の噂が出ると、話ははずむものである。みんな知らず知らずに鬼になる。よほど、批評はしたいものらしい。 ――小林秀雄「批評家失格Ⅰ」―― はじめに ハイスクール・フリート(以下、はいふり)という作品には多様な評価がある。…