はいふり批評6 ジャンル批評まとめ

 彼らの批評姿勢は、彼らを取り巻く世界の先入観と信念と分かちがたく結びついている。だから、これはなんら責められるべきことではない。

ーーテリー・イーグルトン「文学とは何か」

ここまで、はいふりを4つのジャンル、すなわち「お仕事系」「戦闘美少女系」「ミリタリー系」「サイエンス・フィクション(SF)」に分けて検討してみた。今回は最後の総評となる。

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 はいふりとはなんだったのか?再び

 私ははいふり批評の最初に以下のような考えを示していた。

冒頭ではいふりの評価は両極端になっていると書いたが、その大きな理由はこのジャンル分類の誤り、あるいはその困難さに起因しているのではないかと私は考えている

はいふり批評2~5で各ジャンルを見てきたが、はいふりは「お仕事系」としての特性が色濃く出ているのに対し、「戦闘美少女系」「ミリタリー系」として考えると薄味であると結論付けることができる。

はいふりは「お仕事系」アニメであり、海上自衛隊の仕事や文化をよりよく伝えるアニメ作品として、これ以上のものが現状存在していない。その点において、最も評価されるべきなのである。

 

ところが、完全に「戦闘美少女系」「ミリタリー系」として見るのが誤りというと、そうとは言い切れない程度に要素が組み込まれている。SFも含めてだが、各方面に十分な要素が揃えられているということは、それを読み取ろうとする視聴者側の負荷は増大する。ファンの中でも出ることのある意見に「はいふりは詰め込みすぎ」というものがあるが、それは的を射ている。

はいふりは各ジャンルの要素を詰めた結果、視聴者側のジャンル分類を困難にしてしまった。結果、読み取れた人とそうでなかった人の評価に大きな開きが出てしまったのではないかと考えられる。

加えて、当時ははいふりのジャンルをミリタリーよりに見られやすい文脈も存在していた。

艦隊これくしょん」「ガールズ&パンツァー」はいずれもミリタリー×美少女の代表的な作品であり、その後に現れたはいふりがミリタリーのジャンルと関連づけられてしまうのは半ば必然だっただろう*1。しかし、それがはいふりの解釈をより困難にしてしまったのは否めない。

この先のはいふり批評

今まで、はいふりを「ジャンル」というものにこだわって批評してきた。「ジャンル批評」と呼ばれるこれは、文学批評の中の1つに過ぎない。作品を批評するための方法は他にもある。これからは様々な批評理論を用いてはいふりを多角的に検討していく。

次からは、作品に作者の人生の反映を見つけようとする「伝記的批評」を用いてはいふりを見ていこうと思う。

*1:アニプレックスとしてはそこも作品の宣伝として使おうとしていた可能性もある