劇場アニメ「BLACK FOX」感想などなど

一晩経ったが、まだ興奮冷めやらぬ。そんな気持ちでこのブログを書いている。

昨日、新宿バルト9で劇場アニメ「BLACK FOX」を見てきた。元々「ハイスクール・フリート」でサブキャラクターデザインをしていた斎藤敦史さんがキャラクターデザインをしているということで興味を持ったこの作品だが、その感想と若干の考察なども書いていこうと思う。

もしかすると記憶違いがあるかもしれないので、興味を持った方は是非劇場で見ていただきたい!

※ネタバレが含まれますので、まだ見ていない人は自己責任で!※

 闇を切り裂く”黒”になれ!

まず雑感だが、1時間40分にとにかく詰め込まれているので展開が早い早い!特に序盤では感情の方が置いてけぼりを食らうスピード感でストーリーが進んでいく。

作品自体のスピード感を反映するかのようにアクションも多く、かつ多彩。コンテも凝っている感じがして、「天井を落とそう」と天井を見上げてからミアが登場する場面や、敵が来たのを検知したが何もいない?→光学迷彩だ!と様々な場面で目を楽しませてくれる。

アクションの題材も面白い。忍者×科学技術、というとまず最初に「ガッチャマン」が思い浮かぶが、本作はそれよりもリアル方面に近い。特にホログラムを使っていわゆる「分身の術」「身代わりの術」などを再現する場面も多くあり、「SF的忍者アクション」になっている。序盤のアクションから最後の戦いまでこの忍者アクションが画面狭しと暴れまくる。

 

ストーリーの方に目を向けると、単純化してしまえば少女が自分の生き方を見つけるジュブナイル的な作品になるだろう。研究者の父と忍者の祖父、大好きな2人を殺された律花は合格していた父の母校への進学をあきらめ、復讐者となることを決める。仕事とあらば殺人をも厭わない、祖父と同じ道を歩もうとし始めるのである。

だが、彼女は2人を殺した奴らの1人であるミアを殺すことができなかった。それを彼女は自分の弱さだと叱責する。しかし、父と祖父が死ぬ前に残していたメッセージは律花にこう伝える。「石動家は弱いからいつも殺すことで決着をつけてきた」と。

2人の思いと2人からの誕生日プレゼントを受け取った律花は、ここで再び自分の名前を名乗る。彼女は父か祖父のどちらかにしかなれないと思っていた、だが今は2人の意思を継いだ自分だけの石動になることを決めたのだ。

ここで、Lily(英語で百合)はBLACK FOXになる。冒頭のキャッチコピーのように「”黒”になった」ことがここで示されているというわけだ。

律花とミアの関係

この作品で軸になってくるのが律花とミアだろう。この2人からはニヤリとしてしまうほどの二項対立関係が読み解ける。

黒髪の律花に白髪のミア。父から愛を与えられて育った律花と次第にただの研究材料にされていったミア。父か祖父にしかなれないという考えから解放された律花と最後まで父に縛られ続けたミア。

様々な点から2人は対照的に描かれていることが分かる。特にこれは肉親関係において顕著になると言っていいだろう。ミアの父であるローレンはとにかく”石動”という苗字に過剰に反応し、それを抹殺しようとする。”石動”という苗字は律花と父と祖父を結びつける重要な役割を果たしている。だからこそ、序盤で”石動”を捨てた律花が終盤で”石動”の名を名乗るのが生きてくる。対してミアはどうだろうか。結局、ミアとローレンを結ぶ苗字、姓は作中には出てこない*1

 

このどこまでも対照的な2人が最後の戦いの後、どのような関係性を築いていくのか?オタクとしては非常に気になるところであるし、見た直後からこの時間まで何パターンの妄想を頭の中で走らせたか分からない。

父と祖父を殺された律花は本当にミアを許せているのか?ミアはそんな律花にどんな感情を抱いているのか?実に不安定で、実に魅力あふれる関係性である。二次創作の血が騒ぐ。本作はいわゆる「百合」的な描写は無いが、そちらに造詣が深い方はこの関係性を格好の材料にすることができるだろう。

 

それだけに、「その後の2人」が描かれていないのは残念だ。この続きは、またの機会ということなのだろう。

終わりに

勢いで書いてしまったが、非常に満足度の高いアニメだったのは間違いない。1時間40分と長めだが中だるみするようなことは全くなく、キャラは可愛く表情も素晴らしい。アクション、ストーリー、人間関係については前述したとおりである。

この作品、「忍者」や「からくり屋敷」などが出てくるのでかなり海外受けしやすそうなイメージがある。ぜひ海外展開などを行って、続編につなげてほしいと心から思っている。

 

*1:と記憶している