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さよなら、戦争。『ハイスクール・フリート』の世界

ちょうど8/15だし(過ぎたけど)前期見ていたにも関わらず、一話も記事を書くことなくラマタにしたTVアニメ『ハイスクール・フリート』の感想のようなものを書く。

1.戦争から遠かった物語「ハイスクール・フリート

前期のアニメ、ハイスクールフリート。最初のころは艦これやガルパン人気に乗っかったアニメなのだろうと視聴していなかったのだが、ちょっと気になってニコニコで無料配信されていた7話を見てみた。これが面白かった。いきなり7話から見て人間関係も分からない状態でも、面白い作品は面白いのだ。

そして、12話すべての視聴を終えてしばらく日が経った後に気づいたことがある。「ハイスクール・フリート」は戦争に近いようで、一番遠い作品だったと。

2.かつての軍艦。だが、今は海を守る女の子を育てる場所

まず、物語の舞台となる航洋艦「晴風」である。おそらく昔は陽炎型駆逐艦「晴風」として建造され、いつか来るかもしれない戦争に備えていたのであろうこの船は、戦争の無い世界で航洋直接教育艦として生まれ変わっている。この作品では一度として駆逐艦という艦種名が出てくることはない(私の記憶では)。

そして、同様に「武蔵」「比叡」「アドミラル・グラフ・シュペー」も、今は戦艦、装甲艦の名を捨てている。かつて戦争に使われた軍艦が教育の場として現代まで生き続けている、という世界観がこの作品が戦争から遠いことを一番も表しているように思える。

3.「人間」対「人間」を避けるネズミの設定

この作品では、明確な敵というものが存在しない(そもそも物語上「冒険もの」や「漂流もの」に含まれるのに敵なんているわけないだろ、という指摘はこの際無視する)。作品で起こる事件は実験により偶然生まれた特殊なネズミが様々な船の制御を乗っ取ってしまう、というものだ。このネズミが出す電波によって人間が操られてしまう、という突拍子もない設定ではあるが、この設定によって作中では「人間」対「人間」の構図が作られないようになっている。

これもこの作品に含まれる戦争から遠い要素の一つだ。彼女たちは操られて攻撃を行っただけで、そこに政治的・宗教的・感情的要素は一切含まれないのである。

4.攻撃の効かない相手と戦う晴風

上記のように、晴風と戦う船の乗員はネズミによって操られているだけである。よって、晴風が戦う際の選択肢に「撃沈する」はほぼ出てこない。それに加えて戦う相手は「武蔵」「比叡」「アドミラル・グラフ・シュペー」といった晴風の主砲ではまるで歯が立たない相手ばかりなのだ。そのために主だった作戦は「煙に巻いて逃げる」「相手の速力を落として逃げる」「座礁させて行動不能にする」という真正面からの戦いとは程遠い内容になる。

そこが奇妙でもある。晴風が戦って、必ず盛り上がるであろう相手と一度も戦っていないのだ。そう、同じ陽炎型の航洋艦である。同型、同性能さらにはOPでもあったような魚雷の打ち合いも盛り込めるであろうこの相手となぜ戦わなかったのか。

この作品は、とにかく真正面からの戦闘が起こりにくいように設定を作り、さらには戦う相手もまともには勝てないように決められていたように思える。これも戦争から遠い一要素だ。

5.だが、この捉え方には穴がある

いままで淡々と「ハイスクール・フリートは戦争から遠い物語を展開していた」という話をしてきたが、実はとびきりの例外がいる。

ハイスクール・フリートを見た人には簡単に分かる話であるが、それは潜水艦「伊201」である。そもそも駆逐艦や戦艦という呼び名を捨てたこの世界において唯一戦中と同じ艦種名でよばれ*1、晴風の攻撃も効かないわけではない相手である。

さらに、5話の東舞高の教員の話から推測するに、この「伊201」の乗員はネズミによって操られていない可能性が高い。つまり3話だけはこの作品で唯一「人間」対「人間」が繰り広げられていたかもしれないのだ。すでに「抵抗するようなら撃沈してかまわない」という伝令が出ていた晴風。それを発見した「伊201」は、その晴風からアクティブソナーを受け、相手に攻撃の意志ありとして雷撃で応戦した、というのが3話の流れなのかもしれない。

6.まとめ

ハイスクール・フリートの世界を「戦争からの乖離」的な観点から見てみたが、実際には「伊201」という飛びきりの例外が作中に存在していた。今回の私の見方は誤っていたかもしれないが、こういう風に考えてみようと思える作品には、なかなか出会えるものではない。個人的には幻影ヲ駆ケル太陽を見たときのような胸の高鳴りを感じている。こういう作品を何度も見直して、いろいろ調べて、新しい見方を発見するのが、わたしのアニメの楽しみ方なのだ。

*1:だが、納沙幸子のタブレット情報を見る限り「潜水直接教育艦」の略称として「潜水艦」と呼ばれている可能性が高い