4コマ漫画のアニメ化における2つの類型

ちょっと前からだが、4コマ漫画のアニメ化がよくおこなわれている。私もいくつか見る機会があった。その中で4コマ漫画のアニメ化においてかなり大雑把に分けて2つのタイプがあるように思うのでメモしておく。

  1. 四コマ漫画をそのままアニメ化するタイプ
  2. アニメ化するにあたり一貫したテーマを付加するタイプ

1の四コマをそのままアニメ化するタイプは「ご注文はウサギですか?」や「月刊少女野崎くん」などが当てはまるだろう。2のアニメ化に当たり一貫したテーマを与えるタイプは「スケッチブック」や「普通の女子校生が【ろこどる】やってみた」が当てはまるだろう。このメモは私の好きな四コマ原作アニメは2番にタイプ分けされることを発見して書いているものだ。

 

「大雑把にわけた」と言いながら、このタイプ分けはかなり曖昧である。タイプ1だと言っている「ご注文はウサギですか?」と「月刊少女野崎くん」に一貫したテーマが無かったというと、そうでもないだろう。だが、タイプ2の作品を判別するのは比較的容易だ。そもそも4コマ漫画で作品全体を覆うテーマがある作品はそれほど多くない。4コマの性質上、一本かあるいは一話の間にストーリーが完結するからである(最近はそうでもない4コマも増えてきたらしいが)。

そのような4コマ漫画に一貫したテーマを付加してアニメにしようとすると、ある2種類の「付加要素」が必要になってくる(これも「必ずしも」ではないが)。

  1. オリジナルキャラクターの付加
  2. オリジナルストーリーの付加

この2つの中で重要なのは1番だ。2番は1番による副産物的なものであることが多いからだ。

■スケッチブックの場合

 アニメ「スケッチブック~full color's~」に登場するオリジナルキャラクターは「根岸みなも」である。原作のキャラ「根岸大地」の妹としてアニメで登場。のちに原作にも逆輸入された。

この「根岸みなも」の存在が、「スケッチブック~full color's~」にどのようなテーマが存在していたかを表している。根岸みなもは様々な風景や人間をカメラで撮影する。それは、このアニメの主人公梶原空とは違ったアプローチだ。空はカメラではなくスケッチブックにそれを残そうとする。7話ではカメラでは撮れた川を流れる葉っぱや、男性の鼻に止まった赤とんぼをスケッチしようとして失敗していた。この場面だけを見ると、スケッチブックを用いるのにメリットが無いようにも感じられる。空自身「なぜカメラではなくスケッチブックなのか?」という疑問を1話で自分に投げかけているが「なんとなく、ダメなのだ」ハッキリとした理由を自分でも見出していない。

それが、最終話でハッキリと視聴者に答えが届けられる(空自身が気づいているかどうかはわからないが・・・)。空は前にみなもが撮影した美術部の集合写真を元に絵を描いていく、そして絵の中で本来写真にいなかった先輩、自分の弟、近所の猫を付け加えていき、最終的な絵が完成するのだ。これが「なぜカメラではなくスケッチブックなのか?(なぜ絵を描くのか)」という問い、そして作品テーマの一つの答えとなっている。その答えを導き、強調するために主人公とは別視点の存在である「根岸みなも」が必要だったのだ。

■普通の女子校生が【ろこどる】やってみたの場合

アニメ「普通の女子校生が【ろこどる】やってみた」に登場するオリジナルキャラクターは「AWA2(アワアワ)ガールズ」である。彼女たちは主人公たちと同じローカルアイドルであり、その中でもトップの人気を誇っている。

彼女たちの存在もまた、この作品にどのようなテーマがあったかを表す。1話から登場していた彼女たちは、11話にて明確にライバル的存在として主人公たち「流川ガールズ」の前に現れる。AWA2ガールズが舞台に登場してパフォーマンスをすると舞台は盛り上がり、彼女たちのグッズも大量の在庫があったにもかかわらず完売した。それだけ見れば確かにすごいが、AWA2ガールズのグッズは売れても地元の特産品は売れ残ってしまったのだ。それは特産品が完売した流川ガールズとは逆の結果であり、「ろこどる」としての在り方というものを再認識させられる場面となっている。

2話で「地元のために何ができるのかは分からないけど、それを2人で探していこう」と言い、地元のイベントに積極的に参加し、新曲も誰よりも早く地元の人たちに聞いてもらった「流川ガールズ」。全国レギュラーを持ち、CD売上ランキングでも初登場上位になれるが、地元での活動をほとんどできなくなってしまった「AWA2ガールズ」。彼女たちはもはや「ろこどる」ではなく「アイドル」になってしまっていたと言えるだろう。そんな彼女たちも最終話では「私たちも地元でイベント開きたい」と話し合う。「ろこどるとは何か?」という問いに答えを出すために「ろこどるから離れてしまったろこどる」であるAWA2ガールズが必要だったのである。

 

いまに始まったことではないかもしれないが、アニメオタクはオリジナルストーリーやオリジナルキャラクターを好まない傾向がある。その中でタイプ2でアニメ化を行おうと考えるのはかなりの勇気が求められるところだろう。だが、今までの傾向的に私はタイプ2の方が好きそうなので、こういう作りの作品が今後も増えてほしいと思う。