はいふり批評8 形式主義批評その1 ネコと一緒に見るはいふり

 ひとしきり、騒ぎが一層激しくにぎやかになったとき、タルーはふと足を止めた。暗い舗道の上を一つの影が軽快に走っていた。それは一匹の猫、春以来おそらく初めて見かけた猫だった。

ーーアルベール・カミュ「ペスト」

今回は形式主義批評・・・特に構造主義批評を用いてはいふりを見ていく。前回取り上げた吉田玲子へのインタビュー記事の中にはいふりにまつわる興味深い記載がある。

シナリオ先行で、そこからキャラクターをイメージして作っていただきました。

まずシナリオありきで作られたはいふりでは、それだけキャラクターの役割に焦点を置いている可能性がある。そのため、構造主義批評の格好の対象になりうる可能性を秘めているのである。

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はいふり批評7 吉田玲子と「視点」と「家族」

アンドレア「英雄のいない国は不幸だ!」

ガリレイ「英雄を必要とする国が不幸なんだ」

ーーベルトルト・ブレヒトガリレイの生涯」

今回は伝統的批評の一つである「伝記的批評」に手を付けていく。これはその名の通り、作品を作者の人生の反映として見る「伝記的」なアプローチである。

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はいふり批評6 ジャンル批評まとめ

 彼らの批評姿勢は、彼らを取り巻く世界の先入観と信念と分かちがたく結びついている。だから、これはなんら責められるべきことではない。

ーーテリー・イーグルトン「文学とは何か」

ここまで、はいふりを4つのジャンル、すなわち「お仕事系」「戦闘美少女系」「ミリタリー系」「サイエンス・フィクション(SF)」に分けて検討してみた。今回は最後の総評となる。

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はいふり批評5 巨大なSFと小さなRATt

おれが生を享けた憎むべき日よ!呪われた創造主よ!

おまえでさえ嫌って顔をそむけるような醜い怪物をどうしてつくったのだ?

――メアリ・シェリー「フランケンシュタイン あるいは現代のプロメテウス」

はいふりに対して行うジャンル批評もこれで最後になる。ここではサイエンス・フィクション(SF)としてはいふりを見ていく。

果たして、はいふりはSF作品なのであろうか。SF作品である場合、その特徴はなんだろうか?
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はいふり!はいふり!!はいふり!!!

私はハイスクール・フリートはいふり)という作品が好きだ。

放送当時から各話好きだったが、決定的にしたのは最終回である。最終回の内容を詳しくは書けない、ネタバレになるし、来年から始まる再放送を初見の人にも見てもらいたいから。

しかし、最終回は「久々にアニメを見たな!」という思いが心の底から湧いて出たほどの出来であった。脚本も、映像も、音楽も、すべてが私のもつ感受性のアンテナにぴったりのものを送りつけてきやがった。

やっぱりアニメを見たとき最高に盛り上がるのはこういう瞬間だと実感した。アニメ製作者側からの「さあ、ここで一気に盛り上げて・・・しばらくは抑える、まだ、まだだぞ・・・ここで他の楽器も加わって!音を爆発させて!だが、ここで終わりじゃあない、最後の最後・・・ここだ!ここが一番表現したかった部分なんだ!この交響曲のクライマックスであり、完成だ!」という叫びが聞こえてくる瞬間!

そしてその叫びを受け止めるだけの十分なアンテナを自分が持っていた瞬間!

全身の血管がはち切れるのではないかと疑うほどの興奮状態になり、常にそわそわし始めて、結局同じアニメを二度三度見る・・・それこそが最高のアニメ体験なのだ。

 

この記事を書いているのは、私と同じ体験を出来るかもしれない人たちに、はいふりという作品があることを伝えるためである。

先ほども書いたが、来年からはいふりの再放送が始まる。ぜひ見てほしい。

この体験が、決して私だけのものではないことを願って。

はいふり批評4 心にミリタリー魂があるんだよ

「このニ長調ソナタはたしかに、一般的な意味合いでの名曲ではない。構築は甘いし、全体の意味が見えにくいし、とりとめなく長すぎる。しかしそこには、そのような瑕疵を補ってあまりある、奥深い精神の率直なほとばしりがある」

ーー村上春樹意味がなければスイングはない

お仕事もの、戦闘美少女ものに続いて、「ミリタリーもの」としてのはいふりを確認してく。

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はいふり批評3 戦闘美少女からの逸脱

戦闘美少女というイコンは、おたく的ブリコラージュの見事な発明品である

ーー斎藤環戦闘美少女の精神分析

はいふりを戦闘美少女系として見たとき、そこには何が見えるのだろうか。今回の視点はそこにある。

 

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